コンセプト

多様な居場所と心地よい家具

名古屋市立大学名誉教授・特任教授 鈴木 賢一

現在私たちが生活する都市には、生活を支える多数の公共施設があります。それぞれの施設は用途別につくられ、社会生活に必要なサービスを機能的に分担しています。例えば本を読み資料を調べる図書館、市民サービスの窓口のある庁舎、教育を受けるための学校、病気になったときに診療を受ける病院などです。

さて、人々の社会生活や相互のつながりは、情報技術の発達により複雑で多様化し始めています。移動が容易になり地域や国を超えた交流の条件も整ってきました。様々な背景をもった人々が都市生活で

孤立することのない包摂的な社会に向かって、人々の混ざり合った関係を抱擁する環境が求められています。都市において多様な人々を受け入れる公共施設は、これまでのように画一的で孤立したものではなく、融合的で社会に開かれるようになります。

市庁舎のロビーで受験勉強をする高校生や、駅のコンコースでテレワークをするワーカーを見かけるのも不思議ではありません。静粛さの求められる図書館に飲食可能なグループ活動のスペースが設置され、市庁舎の議場が一般市民に開放され、学校に地域住民が常駐できるスペースが用意されるなど、これまでとは異なる新しい活動の風景が生まれています。とりわけ創造的な仕事に取り組むオフィスでは多様な場所の重要性に気づき選択可能な居場所づくりに取り組んでいます。そこにはそれを支える建築やスペースもさることながら、多様な人々の活動を支える心地よい家具が用意されています。

予測困難な社会変化の中にあって多くの人々が気持ちよく質の高い社会生活を保つには、単一機能に対応する建築やスペースのありようから、いつでもどこでも選択的に過ごすことのできる多様な居場所が必要となっています。一人で長時間心地よく過ごせる、二人でお茶を飲みながら楽しく会話ができる、特定のテーマに興味関心のある人たちが集まって学ぶ機会をもつことができるなど、多様な人々が選択しながら過ごし活動できる場所の有無が生活の質を左右します。

健康デザインをコンセプトにしたナゼロの家具は、優しく体を包み、気持ちよく過ごせ、社会的なつながりの調整を可能にしており、人々の日々のウェルビーイング向上にごく自然に寄与しています。都市のあちこちで、生活に密着した素敵な家具に出会いたいものです。

アフターコロナの病院・福祉施設の家具について

ハピネスライフ財団 理事長 東京大学・工学院大学 名誉教授 長澤 泰

明治時代の前半に、コレラや結核が流行しました。患者を隔離するために「避病院」を建てたのが日本の病院のはじまりです。ただ、有効な治療法もなく、家族との面会も禁じて劣悪な隔離環境で収容したので、大変評判が悪くコレラ一揆も発生するほどでした。

戦後は、医療・公衆衛生水準向上の結果、伝染病患者が激減しました。感染症の診療は過去のものとなり、診療の重点はガンを含めて生活習慣病対策へ移行しました。結果的に多くの患者さんの生命が救われ、長寿を実現しています。

しかし、今回の新型コロナウイルス(Covid-19)の世界的大流行は今後の病院・福祉施設のあり方について考える良いきっかけになりました。

われわれの知る「病院」は20世紀後半に成立したものです。外来・検査・放射線・手術部門が中央集中型になり、貴重な専門スタッフが効率よく仕事ができるようになりました。しかし、外来では「3時間待ちの3分診療」と言われ、大勢が殺到し長椅子に座って待つ状況が発生しました。また、患者さんは検査など各部門を巡り、それぞれで待つ事態が発生しました。

このような状況を見た時、「病院」は身体の修理工場のような「病気の館」になっていたのではないかと気づきました。実際に、身体的な病状は快復しても、精神的な癒しは得られていない現状がみられます。従って、これからは健康になる為の「健院」が必要であると思います。このことは、決して、今の病院の存在を否定している訳ではありません。今回も基礎疾患を持つ高齢者や乳児は、感染すると重症化するリスクがあるため、重点的なケアを必要としました。病院は何処に在っても何時の時代でも、病人にとっては「あそこに行けば助かる」という闇の中の灯台です。従ってこれからの病院は、救急・ICUの機能をより充実させる必要があります。

病院建築の面からいえば個室の不足が問題でした。「個室は贅沢だ」という古い考えを未だに引きずっています。明治時代の有料病院は個室中心で、一方無料の慈善病院は大部屋中心でした。ですから個室は金持ちが入る所で、大部屋が普通だと思いこんでしまったのです。近年、日本でも全個室病院が増えています。アフターコロナの時代は、Covid-19 の患者さんも数多く受け入れることができる全個室病院が普通になるでしょう。

Covid-19の流行により、外来待合の長椅子は一つおきに座る状況になりました。ここに紹介されている待合チェアーは、感染防止と快適性を重視した製品です。個室では、家具が重要な役割を担います。患者さん・訪問客・付き添い用のスリーパーチェアは快適な入院環境を実現します。「健康デザイン」をテーマにした家具メーカー、「ナゼロ株式会社」による「アフターコロナの病院・福祉家具」の開発を期待します。

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