コンセプト

よい椅子を選ぼう

名古屋大学・名古屋市立大学名誉教授 柳澤 忠

 私の子供の頃、家は全て畳の部屋で椅子が無かった。親戚の家に応接セットがあって別世界に思えたことを覚えている。和風建築が続いた日本は家具・椅子の歴史は浅い。

 今では住宅だけでなく全ての施設に椅子なしの空間は考えられないようになった。例えば病院では外来の受付・診察・待合、病棟のナースステーション・病室などにそれぞれに適した椅子がおかれる。椅子のレベルが病院の評価にもつながる。外来の待合では長椅子が敬遠されて殆ど一人用の椅子になり、病室も個室が好まれてベットサイドに椅子も置かれることが多くなった。贅沢にも思えるが足腰の弱った高齢者には大変有難い! カラフルな椅子があるだけで部屋の空気も変わり、患者の生きる気力が高まってくる。

良い椅子とは利用する人の状況に多様に対応した椅子である。手摺付椅子は立ち上がりやすく、配置を変える為に移動にも便利である。素材が清掃・洗浄にも配慮され、機能・耐久性・カラフルなデザインなどが工夫されている。ナゼロさんは最近の欧米の事情も良く勉強し、多様な空間に対応した家具を提案してくれる。特に病院や福祉施設に適した家具は患者や障害者に優しく素晴らしい。そうした専門性が住宅の椅子に応用されると、在宅の高齢者の生活も快適になる。最近の医療施設は在宅支援に重点を移しているから丁度よい。

 畳の時代と違って、今日では部屋の目的が明確に区分され、建築空間をそれらしくデザインし、相応しい家具を置くようになった。人間が健康に生活するという目的に向かって都市・建築・家具什器がデザインされ、調和を保たれる。これらを総称して私は健康デザインと呼んでいる。良い椅子を中心に、生活環境を総合的に組み立てる必要がある。家具の歴史が浅い我々は、椅子の良し悪しを見抜く努力が必要なのである。

 

子どものための家具デザインへの期待

名古屋市立大学大学院 芸術工学研究課教授 工学博士 鈴木 賢一

私は、愛知県大府市の「あいち小児保健医療総合センター」の計画に携わって以降、多くの小児病棟・外来プロジェクトに取り組んできました。津島市民病院、名古屋私立大学病院などでは、床や壁面にカラフルなペインティングを施し、子どもの療養環境としての効果を研究しています。一方、亀山西小学校(亀山市)、巴ヶ丘小学校(豊田市)、植田東小学校(名古屋市)などの学校計画においては、小学生や住民・教員の声を設計に反映させ、子どもの視線を重視した環境づくりをコーディネートしてきました。

病院は子どもの病んだ体を治療し心を癒し、学校は子どもの自立性と社会性を培う重要な場です。大人たちは長い時間をかけて、子どもの成長発達にふさわしい制度と環境を準備してきました。ところが、この種の施設が子どもたちに思わぬストレスを与えていることがわかってきました。最も人間性の求められる場所が、子どもたちにとって窮屈であるとしたらおかしなことです。

お年寄りの気持ちや間隔は、自分が年をとらないと実感できません。では、子どもの感覚はどうでしょうか。誰もが子ども時代をくぐり抜けてきているので、よくわかっているはずです。しかし、大人は子どもたちのことを知っているつもりですが、よく理解していません。子どもも、自分の気持ちを具体的に論理的に表現するすべを持ち合わせていません。ですから、大人としての常識を捨て去り、子どもたちと接する中で同じ視点に立てるよう努めるしかないのです。

特に家具は最も身体と接する機会の多い環境要素です。子どもたちの繊細な感覚、大人とは異なる行動特性を理解した上で、構成する要素、色彩、形態に反映させたいものです。ころぶ、はさむ、なめる、のぼる等の思わぬ行動を予測しておかなければなりません。安全性に対する配慮です。また、穏やかな気持ちで使用できる安心感のデザインが求められます。大人が忘れかけている想像力や遊び心をくすぐるような仕掛けもほしいものです。

子どもたちは環境を選択することができません。少子高齢社会であるからこそ、元気な子どもが育つ安全な環境を実現したいものです。子どもたちが発する安全、安心への警告は、全ての家具に求められる当然の要求でもあります。ナゼロさんには、特殊なデザインではなく、どこでも誰でも自然に受入れることのできる家具づくりを目指してほしいものです。子どものための家具デザインはそのための試金石です。

 

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